■第4回 21世紀の「人と建設技術」賞

選考を終えて 懇談会の意見等 受賞一覧


■第4回21世紀「人と建設技術」賞の選考を終えて   (本賞審査委員長 大石 久和)
 21世紀の「人と建設技術」賞の趣旨は、時代の要請に対応し、優れた建設技術 (新素材、新材料の開発を含む)を現地に積極的に導入した事業や現地において既 存の建設技術や事業手法に創意工夫を行った事業など、建設技術の利・活用に顕著 な成績を挙げた事業を選考し、その実施した機関を表彰するものであります。
 本賞は、平成8年度に設置され、今回で第4回目を迎えました。
 今回は、全国事業主体30機関から応募された50事業を慎重に審査した結果、 21事業を選定しました。
 「安全・安心」、「環境」、「ゆとりと福祉」等の観点から国民生活の質の向上 に寄与する事業と「コスト縮減・生産性の向上」、「公共事業の品質確保・向上」 等の観点から公共工事の適切な実施、信頼性の向上等に寄与する事業について、2 1世紀の「人と建設技術」賞審査委員会、同幹事会で総合的に審査いたしました。
 なお、表彰事業の選定にあたっては、昨年に引き続き7名の建設分野以外の有識 者からなる21世紀の「人と建設技術」賞懇談会を開催し、ご意見をお伺いしまし た。
 懇談会では、建設事業の環境・福祉への配慮等について、全体的には建設技術の 方向が望ましい方向にあるとの評価を頂きました。しかしながら、一般の方々へ理 解されるようなアピール、自然エネルギーの利用による地球環境への負担軽減、事 業完了後の効果の計測と評価、水環境に配慮した生態系の保全・再生、歴史的技術 の再評価等については、再に真剣に取り組むべきであるとのご意見をいただきまし た。
 さて、今回の受賞事業を概観しますと、特に、協働してコスト縮減に取り組まれ た事業、利用者等に充分に説明しつつ環境の保全・再生に取り組んだ事業、事業完 了後の効果を検証している事業が高い評価を得ております。しかし、本賞の「人と のかかわり」について、特に事業の計画段階等における地域住民の参画の内容、高 齢者・障害者対策の効果、作業環境の大幅な改善の意義等について、必ずしもポイ ントを捉えていない説明も散見され、応募にあたっては、この賞の趣旨を踏まえた 分かり易い表現が重要であると感じた次第であります。また「人とのかかわり」の 観点から利用者の評価、事後の検証等についてより一層の工夫が必要であることを 付言します。
 今後とも、この賞の趣旨を理解され、公共事業のあるべき姿や新しい建設技術開 発の実現に向けて積極的に取り組まれることを期待します。




■第4回21世紀「人と建設技術」賞懇談会委員からの意見、助言等
 【委  員】(敬称略 五十音順)
   岩 田 照 丈  (株)社会開発研究所 常務理事
   大 熊 由紀子  ジャーナリスト 朝日新聞社論説委員
   川 口 順 子  サントリー(株) 常務取締役
   篠 原 弘 道  NTTアクセス網研究所 部長
   増 井 光 子  麻布大学獣医学部動物応用科学科教授
   松 野 信 也  日本開発銀行 大阪支店長
   渡 部 一 二  多摩美術大学美術学部建築学科教授      (総数 7名)


 【要  約】


   ○全体的評価について
  • 今までの建設技術のあり方が少しずつ変化している。この賞がきっか けになっていることに共鳴している。また、今までは公共事業の整備をす るときに必ず水環境にマイナスになっていたが現在は水環境に配慮して工 事の内容、規模が決めており望ましい方向だと思う。
  • 公共事業では環境への配慮が相当されているので意を強くしている。 それで公共事業を一般の方々に訴えかけるような場があればいいのではな いか。また、この賞の審査あたって評価の基準が多軸化されているので評 価基準をどこにおくのか難しい問題だと思う。
  • 今回、新しいキーワードとなったのは新宿の荒木町にあった江戸時代 の石積みを活用しながら、歴史的な技術を次の時代の人たちに見える形で 残しているという点である。
  • 公共事業の技術的な細かい議論はわからないだろうと思っていたが、 のいち動物園が受賞したあたりから公共事業が身近に感じるようになり、 また、川へフィールド調査に出かけるようになってから河川事業に関して も身近に感じられる。

  ○リサイクル、コスト縮減について
  • 石炭灰をリサイクルしてコスト削減を図っている。
  • 建設発生土のストックヤードの設置、管理運営を一体的に行っている のはすばらしい。こういう事業は今後とも普遍化してもらいたい。

  ○環境について
  • 太陽光や風による発電は地球環境への負担軽減とあるが、環境評価は すぐに表れないのではないか。また、環境への配慮にはどの組合せが良い のか、いろいろなパラメーターが考えられるのではないか。今後の効果を 検証していく必要があると思う。
  • ホタルにやさしい照明とあるが照明だけでホタルの生物環境を保護で きるかどうか疑問である。
  • 河床の変更や景観については、すぐに効果が表れないと思う。それで 当初目標に対して効果が表れた事業に賞を与えても良いと思う。
  • 親水空間の写真を見るとその効果がでにくいように思う。

  ○福祉について
  • 地下道の傾斜は高齢者や障害者にとり角度によっては厳しいものとな るので、この点を考慮してもらいたい。また、地域住民の方々と相談しな がら実施したというところが人と建設技術の「人と」というところに生か されている。
  • 視覚障害者に配慮して造っているが評価が出てから応募したほうが良 い。
  • 高齢化社会を迎えるのにあたり高齢者に考慮したリフォーム事業は大 事なことである。
  • 自由通路では歩行者に対するいろいろな配慮がされているのはすばら しい。

  ○応募について
  • 事業終了後引き続き検証を行い事業の効果が表れ、利用者から評価の あった事業も応募の対象にしても良いと思う。

  ○その他
  • サケの孵化、稚魚の見学を通していろいろな方々に学習の場の提供や 事業の理解のために良い試みだと思う。また、この施設の感想を地域の方 々や子どもたちから聞いてみたい。
  • 学校を造るのに傾斜地の利用等やさまざまな環境への配慮をされてい るが、この事業のアピールが足りないように思える。
  • 地方にテーマパークを造っているがもっと自然を残すべきである。し かし、時間が経たなければ評価はわからないと思う。




■第4回21世紀「人と建設技術」賞 受賞一覧 21事業
※事業概要をPDF形式でダウンロードできます。事業名をクリックして下さい。
事 業 の 名 称 (分野)
受 賞 機 関
協 会 名
特定重要港湾苫小牧港港湾整備事業
(海上工事の築堤材料として、石炭灰混合改良土の製造・施工技術を開発し産業廃棄物のリサイクルと建設コストの縮減を図った事業)
(港湾)
北海道開発局
 室蘭開発建設部苫小牧港湾建設事務所
北海道開発局協会
一般国道4号大堤地下道「スワンロード」事業
(単に安全で便利な道路横断施設というだけでなく、意見交換会を通し地域住民と一体となった構造・設備等の検討を取り入れた公共施設事業の推進事業)
(道路)
建設省東北地方建設局
 岩手工事事務所
東北地建協会
視覚障害者誘導施設整備事業(青葉通地下道)
(視覚障害者の利用頻度の多い地下横断歩道へ「音声による視覚障害者誘導システム」を導入し、視覚障害者の外出時の歩行支援を行った事業)
(道路)
建設省東北地方建設局
 仙台工事事務所
東北地建協会
青森都市計画道路事業3・4・9号図書館通り西田沢線
(「県都にふさわしいうるおいのある官庁街」を形成するため、機能整備(歩道融雪)、環境整備(植栽、舗装材、照明等)、景観整備(電線類地中化)を図った事業)
(都市)
青森市
 都市政策部都市整備課
青森市協会
常磐自動車道いわき四倉インターチェンジの建設
(自然エネルギーを併用した地球環境にやさしくコスト縮減を図ったインターチェンジ施設)
(道路)
日本道路公団東北支社
 いわき工事事務所
日本道路公団協会
八潮排水機場50m3/s増設事業
(大型排水機場に新技術を導入し、建設費の縮減、信頼性の向上を図った事業)
(河川)
建設省関東地方建設局
 江戸川工事事務所
関東地建協会
科学警察研究所建設工事
(フレキシビリティ確保のため実験室の仕様設定とメカニカルボイドの採用及び貴重な資料や装置の保護のための免震工法の採用)
(建築)
建設省関東地方建設局営繕部
関東地建協会
常陸那珂港CALSモデル事業
(港湾整備の施工管理部門に最新の情報技術を導入し、施工段階での工事情報授受の効率化・施工完了後の工事情報データの共有化を図った事業)
(港湾)
運輸省第二港湾建設局
 鹿島港湾工事事務所
二港建協会
建設発生土リサイクル推進事業
(公共事業から発生する建設発生土の有効利用と処分先の確保を図るため、情報提供とストックヤードの設置・管理運営を一体的に行って、建設発生土のリサイクルを推進した事業)
(特殊)
(財)茨城県建設技術管理センター
 建設副産物リサイクル事業部
茨城県協会
藍染川幹線下水道管路内調査工
(大口径管渠調査機による健全度調査)
(都市)
東京都下水道局
 北部第一管理事務所
東京都協会
スーパーリフォム事業 スーパーリフォーム事業試行団地
(高齢社会対応・循環型社会対応の都営住宅改善事業)
(住宅)
東京都住宅局
 建設部住宅改善課
東京都住宅局
 東部住宅建設事務所
  工事課
東京都住宅局
 東部住宅建設事務所
  設備課
東京都協会
新宿区荒木町下水道再構築と石組み下水暗渠の保存復元事業
(下水道新旧施設の一体的活用と松平摂津守上屋敷跡下水暗渠の保存復元)
(都市)
東京都
 下水道局施y設管理部
東京都下水道局
 西部管理事務所
東京都協会
南浦和団地建替事業における地盤改良工事
(建替事業により発生するコンクリート塊を現地で再生砕石にし、地盤改良材として、全量使用することにより、リサイクルの推進、環境保全及び建設コストの低減を図った工事)
(住宅)
住宅・都市整備公団埼玉地域支社
 住宅市街地部土木課
住宅・都市整備公団協会
三面川中小河川改修事業
(サケと人とのかかわりを基に「世界で初めてサケの自然増殖事業を成功させた歴史をもつ種川」で直接水中を観察できる護岸施設を整備し、地域づくりに貢献した新しい河川事業)
(河川)
新潟県村上土木事務所
新潟県協会
一般国道23号岡崎バイパス(西尾道路)事業
(ホタルにやさしい照明選定)
(道路)
建設省中部地方建設局
 名四国道工事事務所
中部地建協会
天竜川「駒ヶ根水辺の楽校」事業
(計画・設計・施工の各段階に地元住民と専門家の意見を取り入れ整備を行った水辺空間整備事業)
(河川)
建設省中部地方建設局
 天竜川上流工事事務所
駒ヶ根市
中部地建協会
東静岡駅南北自由通路整備事業
(社会福祉の観点から安全で快適な歩行者空間の創出を図った事業)
(都市)
静岡市都市開発部
 新都市整備課
静岡市協会
寝屋川北部地下河川事業
(日本初の一次覆工のみによる内圧対応型トンネルの築造)
(河川)
大阪府
 寝屋川水系改修工営所
大阪府協会
淡路景観園芸学校整備事業
(花と緑のまちづくりを実践できる人材を養成する学校を開設するため、環境保全に積極的に取り組んだ事業)

(建築)

兵庫県まちづりく部
 公園緑地課
兵庫県まちづりく部営繕課
兵庫県まちづりく部設備課
兵庫県土地開発公社
兵庫県協会
甲賀広域都市計画事業水口第二土地区画整理事業
 (2-1工区樹木移植工事他5工事)
(近江水口第二テクノパークにおける里山環境保全のためのミチゲ-ション技術)
(都市)
住宅・都市整備公団関西支社
 滋賀開発事務所水口開発課
住宅・都市整備公団協会
えひめこどもの城建設事業
(丘陵地の地形を活かし、自然環境の保全を重視した整備手法による子どもたちの創造と活動の拠点づくり)
(都市)
愛媛県土木部
 道路都市局都市整備課
愛媛県協会


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